エラリー・クイーンの影響を受け過ぎ。というより、むしろ模倣と言った方が近いレベルの本格推理小説です。ここまでやるならいっそ「読者への挑戦状」の頁も差し挟めばいいのに。
とはいえ、作品の出来そのものは決して悪くありません。
話としては、冒頭でまったくの赤の他人四人組が集まり、それぞれ何らかの理由で死んで欲しい人間を、交換殺人という方法で殺害する相談をする場面から始まります。
誰が誰をターゲットにするのか。実行の順番はどうするのか。これはバイスクルと呼ばれる種類のトランプを使って決定します。この時に条件があります。自分で自分のターゲットを殺害する組み合わせは不可。加えてAさんがBさんのターゲット担当、BさんがAさんのターゲット担当、残ったCさんとDさんがお互いのターゲットを担当、というような相互交換になる組み合わせは不可、というものです。
読者の推理する箇所は、誰が誰のターゲットを殺害することになったのか、という点になります。最後の難関を除けば、論理的な推理を進めていくことで、ある程度は解けます。
問題はカードの絵柄についての知識です。これは実物のバイスクルを知らないと無理でしょ。逆に言えば、実際のバイスクルを知る人間がそう多くはない、という現実を悪用した謎掛けになっているのがこの作品の特徴です。私はそこが気に入らない。知っているかどうかだけの問題で、そこに論理や推理は入り込む余地はないのですから。
キングを探せ (講談社文庫)
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ちなみに「バイスクル 絵柄」で検索すると分かりますけども、バイスクルと一言で言っても、その絵柄はかなり多様です。作品に出て来たスタンダードなものばかりというわけではありません。バイスクルの絵柄を知っているという人でも、もしかするとその絵柄は小説で扱われたものとは全然違うケースもありえるのです。
その点を除けば、第一部での四人のやり取りから、最後に残ったカード=関本が引き受けたカード(殺人)が何だったのか、という謎掛けは面白いですね。そのカードが不可の条件に触れてしまうKではおかしいわけですから。関本が引き受けたカードは、王様の絵柄ではあってもキングではないカード、となります。
おっと。少し話し過ぎたか。まだ組織に消されたくないので、今回はこの辺で失礼させてもらいますよ。
読書期間:始)2015.1.20 ~終)1.24
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