「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎 (祥伝社文庫)

2015-08-01

伊坂幸太郎

t f B! P L


前作「陽気なギャングが地球を回す」の四人組の銀行強盗たち、それぞれの日常を描く小説です。
第一章は連作短編の形で各キャラの性格や特徴、特技が描かれているので、前作を読んでいなくてもすぐに飲み込めるようになっていて親切です。
そして一話ごとにひとまず決着を見るものの、後に続く第二章・第三章へとそれらのエピソードが全て繋がっていきます。思わず「ラッシュライフ」を思い出してしまいそうな構成です。

ちなみに四人の中で私が好きなのは雪子です。あまり目立つタイプのキャラではありません。
どちらかと言えば冷静沈着で、目で人を殺すようなタイプです。
とはいえ、彼ら四人は誰を挙げても、ちょっと一筋縄ではいかないような人たちばかりですけどもね。

雪子は物静かなタイプに見えて、実は野次馬根性というか好奇心旺盛なところがあります。
普段はそうとは見えないように、落ち着いた振る舞いをしていますけども、大胆で強かなところがしばしば出てきます。
そのギャップがいいんですよね。

それにしても、なぜ彼らは強盗なのに人助けをするのか。
この説明を、ボーナストラックで取ってつけたように祥子が口にします。
この部分は別になくてもよかったんじゃないかなぁ、とは思いますけども、要は悪人正機説みたいなものだっていうことですか。
日頃悪いことばかりしているから、時々全く無関係な人を助けたりして、バランスを取っているということなのでしょう。


さて、感想ですけども、私としては前作の方がよかったなぁという感じです。
ただ前作では裏切る女として描かれた雪子が、決して峰不二子ばりにしょっちゅう裏切るような人間じゃなくて、どちらかと言えば、野次馬根性と旺盛な好奇心を併せ持ち、時には人情家の一面をも持つ女性として描かれていたのが、何となく嬉しいですね。

前作と本作を跨る形での謎の一つに、なぜ祥子は響野なんかと結婚してしまったのか、というものがあります。
二人の結婚は由々しき事態です。ですがこの謎の解き明かしは、どうやらなされないようです。

響野、嫌いじゃないんだけどなぁ。
ただ実際に近くにいたら、騒がしくてうっとおしそうなんですよね。
友達にはしたくないタイプかな。

読書期間:始)2015.1.13 ~ 終)1.19

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