
あらすじ
失踪した女流作家・葛木志保を探して、式部剛は「夜叉島」と呼ばれる孤島へと辿り着いた。
そこは明治政府の祭政一致政策により、迷信や邪教として弾圧の対象とされた土俗的・民俗的信仰がいまもなお支配する土地であった。
島の者たちが信仰する神とは一体何なのか。
彼らは決してそのことを口にしようとはしない。
そしてこの島を訪れたはずの葛木志保は一体どこへ消えたのか。
京極夏彦さんの「百鬼夜行シリーズ」のような、五行や仏教、伝承の類の宗教に関わる話がチラホラと出てきます。ですが、なぜ主人公がそのような知識を持ち合わせてるのかの説明はありません。このあたりはちょっと不親切ですね。
他にもおかしな点は多々あります。まずいろいろ整理して考えてみます。
3日で帰ると言って、そのまま失踪した葛木志保を主人公の式部は探しに来ています。まず失踪している時点で何かのトラブルに見舞われたのではないか、と想定して主人公は出て来ていると考えるのが一般的ではないでしょうか。
そして失踪した葛木志保の、もはや廃屋となっている生家を訪れますが、そこで何者かの大量の血痕を目にします。この時になって主人公の式部は、探し人が深刻な事態に陥ったのではないかと考えます。
え!? 今頃? 今頃になって、そう思うわけ? 血痕を見てはじめて「もしかして!? まさか!?」とか思ったわけですか? じゃあ、どうして探しに来たんですか。心配で探しに来たにしては悠長じゃないですか?
三章までの時点でこの程度です。次の四章からは、辿り着いたその島で先日何者かが殺されたという話を聞きます。
もちろんその何者かとは志保なんですが、被害者は本当に志保だったのか、犯人が誰なのかと考えて島を回っているにもかかわらず、悠長に観光気分で島の風習について訊ねている姿はやはりおかしいです。五行や仏教、伝承の類の話なんてどうでもいいじゃん。早く犯人捜せよ(笑)
それが五章あたりです。明らかに、信仰に関わる謎と事件との絡め方が不自然すぎるんです。
極めつけは最終章ですね。目の前で人が殺されるのを目撃して、衝撃を受けたにもかかわらず、その場から離れ、人里に着いた頃には完全に失念してるっておかしすぎるでしょ(笑)
黒祠の島 (新潮文庫)
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一点、よかったところを挙げると、後半の罪と罰に対する問答の部分でしょうか。加害者に事情があれば、罪は割り引かれるのか? というところですね。
これに対して被害者が犯罪者であった場合、あるいは善良な者だった場合はどうなのか。つまり被害者が犯罪者だった場合は犯罪者への罰、善良な者であった場合は加害者の罪、という形で加害者の罪は軽くなったり重くなったりするべきなのだろうか。
正解などない問いかもしれませんが、このような種類の問いを自身にぶつけて、自身なりの答えを作品にはっきりと反映させるという趣が強く出ていれば、もっと味わい深いものになったかもしれませんね。
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