「悪魔のいる天国」星新一 (新潮文庫)

2015-07-27

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 ショートショートの神様として知られる星新一氏のSF短編集の一つです。テレビ番組の「世にも奇妙な物語」の原作として使われることもよくあるので、名前くらいはご存知の方も多いのではないでしょうか。

 氏の著作は、宇宙や未来の世界を舞台とした物語が多いのが特徴です。
 「未来予想図」あるいは「科学の発展」という言葉を聞くと、つい幸せな未来や世界を思い描いてしまいがちだと思います。ですが氏が描く未来予想図は、極端に冷徹でシニカルなものです。その極端さが、読者に「そんなバカな。ありえない。荒唐無稽な物語だ」という印象を、善良な読者に与えます。
 また同時に、氏の著作は救いのない話が多く、後味は決していいものだとは言えません。人間性悪説に基づいているのか? と思えるほど、いわゆる「善人」と呼べる人間が出て来ません。登場する人物は軒並み、残酷な人間です。


 ショートショートという物語の構成上、極端な話として短くまとめる必要があったことは想像に難くありません。その極端さが荒唐無稽な印象を生み出しているのも確かでしょう。
 ですが読後には、残酷でない人間など果たしてこの世にいるのだろうか、という逆説的な問いが、現実世界における人間に対して頭をもたげて来ます。


 人間の本質的で暗い部分というものは、誰にでもあるのではないでしょうか。ただ普段は目を背けているだけで、それをできるだけ意識しないように努めてはいるのでしょうけれども。氏はそういう部分に焦点を当て、白日の下に荒唐無稽な話として読者の目に曝している、という感想を私は持ちました。
感想短歌
 幸せな己の未来期待する
 他人の不幸は止むを得まい
読書期間:始)2014.12.14 ~ 終)12.22

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