「ウロボロスの基礎論」竹本健治 (講談社ノベルス)

2014-09-13

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 前作「ウロボロスの偽書」と同じく、この小説は推理小説ではありません。推理小説的な側面は備えています。しかしそれは飽くまで形式的に組み込まれただけの観があります。その点こそ本当に、う○こです。
 推理小説と呼ぶには、回収し切れていない事柄が多いことを挙げておきます。「もう一人の僕」「書き加え事件」「第一のうんこ事件」と真相を明かさずに、垂れ流し状態です。
 とは言え、私はこれらのことに腹を立てたりはしません。実際に私が生活する現実においても、わからないものはわからないままで置き去りにされているからです。
 例えばテレビやインターネットの仕組みなど、未だによく理解していません。私にとって、機械の類は全て謎だと言えるくらいです。
 にも関わらず、特に追求もせずに、平然と受け流して暮らしています。その点では、本作はある意味、妙な現実感があると言っていいかもしれません。

 竹本氏は虚構を、実際に現実で起きた事件と思わせようという意図が本気であったのかどうか、この点は微妙です。「うんこ事件」なるものに、果たしてどれだけの現実味を持たせることができるでしょうか。あまりに現実離れしている事件のように思われます。

 現実と現実味は違う。虚構における現実味とは、その物語における現実水準に(意識的・無意識的かは問わず)照らして判断されるものだ。という論を展開することが主眼であったなら、それはほぼ成功しているかと思います。


 全体に対しての個人的な感想としては、持って回った情景描写や修飾が多すぎなのではないかという印象があります。視覚的な情報だけに限らず、ある事物・事象を正確に伝えるために、言葉を重ねれば重ねるほど、皮肉にも書き手の言わんとするところが伝わらない、ということは往々にしてあります。

 論文であれば、また事情が違ってきます。ですが、読み手にイメージを喚起させる、という思惑が強い小説においては、イメージの細部は読み手に任せる形で放り出してしまう方が、却っていい結果に結びつきそうです。

 認知言語学でいうところの「典型例・理想例」あたりを活用する方法が効果的かと思います。ですが、ここでそのあたりのことを深く掘り下げても仕方がないようにも思えますので、今回はこの辺にしておきます。

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