「鬼の跫音」道尾秀介 (角川書店)

2012-07-07

道尾秀介

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「鬼の跫音(あしおと)」は短編6作で内容的には好みが別れるところだと思いますが、個人的には1作「ケモノ」が結構好きな感じでした。
 「ケモノ」は決して後味のいい話ではないのですが、これから先に話が進むのかと思いきや、という展開で前半の伏線が回収されていく様はうまいなぁと感心させられました。
 全体を通して思ったことは、道尾氏は長編よりも短編の方が良いような気がするということです。
 オチも意外と予想しづらくて、最後にこうくるか、といったちょっとダークな「世にも奇妙な」系のお話が好きな方にはおすすめの一冊です。


「ケモノ」
ある日少年は、使っていた椅子の脚が折れ、その断面に一連の言葉が刻まれているのを見つけました。椅子は祖母にもらったもので、刑務所作業製品らしいということを知っていた少年は、刻まれている名前をネットで調べたところ、その名前は昔(昭和40年)に起きた両親殺害事件の犯人のものでした。犯人は何を伝えようとしたのか、刻まれた言葉の意味を調べるため、少年は事件の起きた福島県の村へ旅に出るのでした。

「鈴虫」
自然公園の谷底から、かなり以前に遺棄されたと思われる男の死体が発見され、遺留品から、当時の友人であった男が逮捕された。
現在、その友人は死体の男が付き合っていた女性と結婚していた。
警察での取調べで、彼は死体を遺棄したことを認めるが……。

「よいぎつね」
仕事の都合のため、男は少年時代の忌まわしい記憶が残る故郷に帰ってきた。
あの時と同じ夏祭りの夜に。
祭りの賑やかしさの中、一人、記憶の蓋の隙間からじわじわと溢れ出る苦い記憶の断片を反芻していた男は、
あの時と同じ面影をした女性とあの頃の自分に良く似た少年を見掛ける。

「箱詰めの文字」
推理小説家の元に一人の若い男が訪れ、突然小説家に謝り出す。
以前、彼の部屋に侵入し盗みを働いたと言うのだ。
盗まれたのは招き猫の貯金箱。しかしその貯金箱は小説家には全く身に覚えのない品物だった。
招き猫の貯金箱は一体誰のものなのか。
貯金箱を開けてみると、そこには一言「残念だ」と書かれた紙片が一枚入っていた。

「冬の鬼」
火事で火傷を負った女と、その女を愛する男の話。
女が自分の醜い姿を見て心を痛めないよう、男は家中から鏡や姿の映るものを全てなくしてしまう。
女は男を見つめた。そして、男の瞳に映る自分の姿を見てしまった女の願いは……。

「悪意の顔」
僕は同じクラスのSが怖かった。Sはいつも僕にいじわるをしてくる。
Sが怖い。Sが怖い。
そんな僕を見て、近所に住む女性が僕に声を掛けてきた。
その怖がる心を失くしてあげようか、と。
彼女の話す、何でも吸い取る不思議なキャンバスの話を聞いた僕が彼女にお願いしたことは……。

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