「別冊図書館戦争1」有川浩 (角川文庫)

2016-08-10

有川浩

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「……はっ」
目を覚ました灰原の額は、粘り気を含んだような汗にまみれていた。
「何だったんだろう、あの女は」
知らない異性が夢に出てくる、それはフロイトだかユングだったかが、自分が男なら自分の女性的な部分を表しているとか、自分が理想とする異性像を表しているとか言ってたような気がする。
はて。あれが俺自身の女性的な部分だとすれば、かなりあほっぽいな。もし理想像だというなら、俺はあほっぽい女が好きなのか。

確かに嫌いではないな。
ベッドに仰向けのままどこともなく天井を見やりながら、一人納得する灰原だった。

 

あほっぽいと言えば、笠原郁もあほっぽいよな。
「別冊図書館戦争1」でも引き続きあほっぽさ全開で、それを不快に感じることもなく読めたんだから嫌いというかむしろ好きなぐらいなんだろう。
いやあ、でもキスはしたけどきちんと「好き」って言葉に出して言ってもらえてないから何となく不安だとか、実際にそんな女と付き合ったら面倒くさそうだよな。

そもそも堂上ってそんなにいい男か?
欲しいものは何かと、郁が酔った頭で考えて我知らず口走った「一番はもっとキスがしたい」という言葉に乗って「その一番はこっちも思ってないとでも思ってるのか」なんて言って、いきなり強気になってキスしてくるようなムッツリだぞ。
そんなもん、好きな人とのキスなら誰だってしたいわ。

でもまぁ「別冊図書館戦争1」の一番の見どころは三話目だな。
「止めないで下さい!」「触って下さい!あたし、もっと触られたいんです!」とか、下手すりゃ淫乱女認定されるような台詞だよな。
でもそういう女は大好きだ。男は大抵そういう女が大好きだ。
だから彼氏にキス以上をねだったらふしだらな女と思われて嫌われるんじゃないか、激しいキスの先に興味があって、あの手で触られたいとか、あまつさえもっといろんなことをされたいとか、そんなことを考えてるのがばれたら、いやらしい女と思われて嫌われるのではないか、と郁が不安に駆られる必要はまったくない。
なぜなら男はそういう女が大好きだからで、堂上もそういう点では極々普通の男だからだ。



寝ぼけた頭でそんなどうでもいいことに無駄に思いを巡らせ、灰原は「うんうん。やっぱりラブコメはこういうもどかしい感じが、何かいいんだよな」と一人で納得した。

そこでふと夢の中の女のことを思い出す。
あのはるのっちみたいなあほっぽい女が実際にいたらいいのにな。
その時、灰原はあることを思いついたのだった。(続く)

読書期間:2015(H27).4.24~4.25

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