後味がいいと言える結末では決してありません。
伊坂作品では、珍しい部類のもののように思えます。
善良な人々が災難に見舞われて、命を落としていきます。
確かに死は平等に誰にでも、いずれ何らかの形で訪れるもので、善良であれば死なずに済むということはありえません。
話の筋自体は、単なる復讐劇と見えなくもない内容です。
「現在」と「2年前」の物語を、交互に描写するという書き手の技術は、高く評価できると思います。
ですが各話を時系列順に並べて読み進めるなら、内容的な評価はそれほど高くならないと思います。
ただ、現在の小説の良し悪しの評価は、こういう技術を駆使できるか如何かで左右される部分が多いのも事実です。
確かに技術はあるに越したことはないですし、その有無がプロと素人との大きな違いなのかもしれません。
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
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内容云々については、個人の好みの問題だと言われれば反論はできません。
少なくとも私の場合は、やり切れない思いを抱いたのは確かです。
とは言え裏を返せば、その事実そのものが、間違いなく心を動かされた証拠だとも言えます。
そういう意味では、良作なのかもしれません。
ただしいつもの伊坂作品に見られる軽快な文章は、今回は内容的な問題のためか、上滑りしている観があり、少し残念な印象があります。
最終的に、2年前の事件に関わった者で生き残ったのは犯人の一人だけという点も、読後の消化不良に影響しているかと思います。
本当にこの終わり方でよかったのかな? もっとハッピーなラストは用意できなかったのかな? と今でも首を傾げてしまいそうになります。
決して駄作ではありません。ですが決して後味のいい作品でもありません。
これが私の率直な感想です。
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