集英社から出版されている「高野聖」を読了しました。表題作を含む五篇からなる短編集です。
いわゆる俗っぽい怪談小説を期待してたんですが、実際には幻想小説といった内容でした。もしかすると読む人によっては怖いと感じるかもしれませんが、基本的には怖い話はありません。
「星あかり」と「海の使者」は登場人物が一人で、ひたすら妄想の類を膨らませるような話で、必然的に話自体は膨らみません。
表題作の「高野聖」については、怪談的な怖さや不気味さよりも生理的な気持ち悪さを覚えます。 特に印象的なのは森の中で蛭に襲われる場面ですね。実際に蛭に吸い付かれた経験があるので、余計に気持ち悪く感じました。
「眉かくしの霊」に至っては、もう何が怖いんだか全く分かりません。
どちらかというと姦通事件の話に出てくる、婆さんや猟師、婆さんと暮らす嫁、そこに訪れる画師、これらの生身の登場人物たちの方がよほど怖いです。狂っているのにその自覚がない人間が一番怖いという思いが湧きました。
高野聖 (集英社文庫)
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この五篇では「外科室」が個人的には一番のお気に入りです。
現実にはありえないことだとは思うのですが、青臭い私としてはありえないからこそ逆にそんな稀有なことがあって欲しいような気もする、そして少し残酷なお話です。
「外科室」あらすじ
医師・高峰は大きな手術の執刀を控えつつも、落ち着き払っていた。
外科室の手術台の上では、患者である伯爵夫人が手術のための麻酔を頑として拒む。
人に話せぬ秘め事を、麻酔によって自分が無意識の内に口走ってしまうことを恐れていた。
医師・高峰は彼女の意思を汲み、麻酔無しでの無謀な手術に挑むのだが、彼女の秘め事とは一体……?
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