記録的な豪雨の夜、雑誌記者の高坂昭吾は道端で自転車をパンクさせて立ち往生をする少年・稲村慎司と出会う。
不思議な雰囲気を持つ少年だった。
二人は道にぽっかりと開いたマンホールを見つけ、そこに濁流が凄まじい勢いで流れ込んでいく様子を目にした。
それは気付かずにうっかり落ちてしまえば、まず助からないであろう小さな闇だった。
そして事件は高坂たちが心配するよりも前にすでに起きていた。
小さな子供の失踪事件。
子供の持ち物である傘がマンホール近くに落ちており、
おそらくはそのマンホールに落ちてしまったのだろうと誰もが最悪の結果を推測できた。
子供の傘を手に取った稲村慎司はぽつりぽつりと口を開き、事の成り行きをまるで見ていたかのように話し出す。
なぜマンホールは開いていたのか。事故は意図された、悪意ある悪戯だったのか。
事故の取材を続ける高坂昭吾の元には奇妙な手紙が届くのだった。
評価の高い宮部みゆき氏の小説初読です。
本屋でも良く見かける作家さんだったので一度読んでおこうと、初期作品とは知らずに読んだのですが、私にはなぜこの小説に対しての一般的な評価が高いのか、判り兼ねます。
龍は眠る (新潮文庫)
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登場人物の稲村慎司少年はいわゆる超能力者で、人や物から残留思念を読み取る能力を持つわけですが、決して超人というわけではありません。視力や聴覚が人よりちょっと優れている程度の超能力者とでも言えばいいでしょうか。
人間的な部分は年相応の非常に未成熟な人物として描かれます。そういう人物設定のリアリティについては、確かに評価するべき点があると思います。
ですが肝心のストーリーの方はといえば、極めて淡々と進行し、退屈を覚えました。どこを面白いと思えばいいのかが私にはわかりませんでしたし、感動などは微塵も感じませんでした。
ミステリー要素がちゃんと盛り込まれていますから、話が進むにつれ、隠された真相が徐々に明らかになる展開が大好きなミステリーファンには楽しめるのかもしれません。
それでも平坦な進行、きちっとしすぎの観のある人物設定など、初期作品ということで目を瞑るにしても、今日ほどの高い評価を得る内容だろうかといまだに首を傾げる次第です。
個人的な意見としては、いわゆる善人が多すぎる物語と感じました。つまりそこが一番リアリティや共感を覚えなかった部分であり、それゆえに面白みを感じることができなかったのではないかと思っています。
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